古くは江戸時代から、江差に住む人たちはみな家印という独特の記号、今でいうアイコンのようなものを持っています。屋号とも家紋ともまた違う家印は、その家の目印として各家の棟や蔵などに刻まれ、遠く海を渡ってやってくる北前船の指標にもなっていました。家紋などのように代々受け継がれるだけでなく、家の主となるものは新たにつくることもできるという家印。それは、一家の理念や願望が記号化された、江差の人びとにとって特別な印なのです。
◎この人に聞きました。
室谷元男(むろやもとお)さん
「江差町歴まち商店街」元理事長で、まちづくりグループ
「江差いにしえ資源研究会」会長。
富山から近江商人とともに江差に渡って4代目。「江差の一番の魅力は“ひと”。このひとに会いたいと思って来てくれたら最高です。」
聞き手:しげっち
(江差町公式キャラクター)
話好きだが今回は聞き役。幕末、
江差に実在したとんち名人。大酒
のみだが、甘いもの大好き。
歴まち商店街協同組合元理事長
江差いにしえ資源研究会会長 室谷元男さん
ところで、家紋と家印の違いってなんべ?
伝承していくだけじゃなく、新たにつくってもいいところですね。
北前船を迎えるとき沖からでも見えるように、
家の棟のところに大きく印したのがそもそもの家印のはじまりでした。
江戸時代の頃からだもんな。
もっと前からあったかもしれませんね。
その頃のことはしげっちさんのほうが詳しいのでは?
ん、んだ。ていうか、未だに増えでるんだべさ?
長男がその家の家印を継いだら、次男は自分で家印をつくることになるので、
本家、別家と、どんどん増えていきますね。
つくるのにルールとか決まりってあるんだべが?
別に役所とか、どこかに登録するとかもないんで自由。
要するにどうでもいいんですよ(笑)。
そういうとこ。そういうどこいいべな、江差。
とはいえ、やっぱり昔よりは家印を意識する家が減ってきたので、
こうやって手ぬぐいにしたりして継承していこうとしてるんです。
よ、元男。いいね!
町並みを新しくしたときも、なるべくみなさんに軒先につけてもらうようにしました。
だから、江差のいにしえ街道とか歩いてもらえばいろんな家印を見てもらうことができますよ。
むかしの江差を思い出させてくれるような町並みだもんな。俺もときどき歩いでるよ。
江差みたいな小さなまちだと同じ苗字が多いので、そういうときにも家印って便利なんですよ。
つうと?
高橋さんがいっぱい集まっちゃったときとか、㊀(まるいち)の高橋さん、㋙(まるこ)の高橋さんとか。
味があって、いいな。けど、読み方が難しいんだよな。
そうですね。けど、◯は金運や福徳、円満。
∧は身代、財産が山ほど積もる、〼は魔除けなど、家印にはそれぞれ願いが込められ、
ちゃんと意味があるからおもしろいですよね。
今、家印は全部でどれくらいあるんだべか?
たくさんありすぎて、まったくわからないです(笑)。
あれ、この文字!
これは江戸時代からの落書きです。山松って書いてるんですけど、これは石川県の輪島のおちぶねの商人、
長滝さんですね。のちにこの方の子孫が町長になるんですけど。
江差に来てもらえば、こういうのはたくさんありますよ。
なんだか懐かしいな。江差には今もかつての歴史が息づいてんだな。
はい、その通りです。
江差の名産いかをはじめ、にしんやたこ、江差追分に欠かせない尺八やかもめなどをかたどった箸置きは1個150円。(※金額は取材時)江差陶石研究会のみなさんがひとつひとつ丁寧に手づくりしているんですって。
北海道産の素材にこだわり、パティシエの奥さんが毎日手づくりしているケーキ。テイクアウトはもちろん蔵内の喫茶スペースでコーヒーと一緒にイートインもおすすめです。シュークリーム150円〜。(※金額は取材時)
Cafe&Sweets 壱番蔵
http://ichibankura.sakura.ne.jp/index.html
北海道檜山郡江差町姥神町42-3
☎0139-52-5789
(営)10:00〜18:00 不定休
江差のしるし、家印。
江差いにしえ街道をちょっと歩くと、いろんな種類の家印に出会えます。約300年前から江差の町並みの象徴でもあった家印は、今なお江差のまちに息づく特別な存在でした。北前船が家印を目指して来たように、家印を目じるしに江差のまちに、ぜひ。室谷さんも歓迎してくれますよ。